気に入ったもの2023

こんばんは。うかうかしていたら年が明けてしまった。2023年に読んでよかった、聴いてよかった、観てよかったものなどを紹介します。

読んでよかった📚
「日曜日の住居学」宮脇檀
 最近友達になった人から、宮脇檀の「旅は俗悪がいい」という本をお勧めされて読んだら面白かったので、宮脇檀の本を次々に買ったり借りたりして読んだ。そのうちの一冊。この方は建築家で、個人の住宅を多く手がけた方なんだけど、文才もあって、住宅に関する気さくな文章が読みやすい。彼の中で「こうなりたい」というかっこよさが明確にあって、それを演じているというか、それになろうとしているんだけど、それが取り繕うとか虚勢を張っているわけではなくて、「こう思うからこうしたい」という意思を感じて、そこが好きだった。彼の他の本では設計図とかプランをどんどん載せていて、そこには「このときはこう考えてこう設計したけどそれは間違いだった」などと書いてあって、そういうのって虚勢を張っているだけの人にはできないことだし、自信がなければ自分の手の内を明かすようなことをできないので、自分の仕事に誇りを持って毎回取り組んでいるんだなと思った。この本はエッセイ集なんだけど、概ね彼の主張は一貫していて、「自分の頭で考えましょう」ということが書いてある。でも全然説教くさくなくて面白いですよ。

「ミシンと金魚」永井みみ
 2023年に読んだ本の中で一番衝撃を受けた。認知症の女性が主人公なんだけど、その女性の視点で物語が書かれている。レビューなどを読まずにとにかくまず本を読んでほしい。素晴らしかった。

「ストーナー」ジョン・ウィリアムズ 東江一紀訳
 「ミシンと金魚」を読んだあと、人間の物語みたいなものを読みたいなと思って読んだ。なんでもない人間と言ったらそれまでだけど、なんでもない人間、後世に語り継がれるような、伝記になる人間でなくてもその人固有の人生があるし、その人だけの喜怒哀楽、その人の周辺の人たちとの有機的に連続した関係があって、それを丁寧に書いた小説です。

「とんこつQ&A」今村夏子
 夏子〜〜〜〜〜〜〜!夏子の小説はじっとりとして不気味なはずなんだけど異様にさらっと自然に書いてあってそれが本当に怖い。ありえないような描写でも「こういう人いるよね」という現実味がある。小説でしかできないことを小説で見せてくれる。

「脱文明のユートピアを求めて」リチャード・T・シェーファー、ウィリアム・W・ゼルナー著 松野弘監訳、徳永真紀、松野亜希子訳
 アメリカの宗教について、アーミッシュからサイエントロジーまで種々解説している丁寧な本です。665pあるので全て読むのは大変だけど、興味のあるところだけでも拾い読みするといいですよ。アメリカの映画やドラマを観る人であれば、前提知識としてこれを読んでおくとより深く理解できると思う。

「角筆のみちびく世界 日本古代・中世への照明」小林芳規
 みなさんは角筆(かくひつ)についてご存知ですか?私はこの本を読むまで知りませんでした。硬くて先の細い棒などにインクや墨を付けずに、紙を凹ませて文言を記載するという筆記方法です。貴重な海外の文献に書き込みする際や、講義中などで墨や筆を使って書くような暇がない場合にささっとメモするときなどに使われたりしたらしい。それゆえ口語的な表現も見られ、当時の言葉遣いを推測する資料として貴重らしいが、なにせ紙を凹ませるだけなので後世の人が一見しても何か書いてあるとは分からず、資料の数が少ないらしい。面白く読んだ。

「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」村上春樹
 ある出来事が起こってもそれには必ず終わりがあって、終わりが来ることを受け入れないことができるにしても、それを受け入れるべきだし、自分の責任において受け入れないといけない。いけないこともないけど、大きな流れというものはある。大きな流れに対する小さな人間の些細な行動でも、やれるだけやることは大事なのかもしれない。救いがないように思えても誰かに希望を託すことはできる。それが非常に個人的で、相手がその希望を託されているとは知らないとしても。偉大なものや、強い意志に惹きつけられて、それらに翻弄されているとは全く思わず、自分の意思で自分の人生を決定しているように思っているピンクの女の子、で、結局この人何もしないし。何もしないこともないけど、何もしない人の皮肉?またいずれ読み返したいと思う。

「セロトニン」ミシェル・ウエルベック 関口涼子訳
 ウエルベックは性欲が強くて彼の小説では彼の分身みたいなおじさんが20代前半の女性とセックスしまくる描写がとにかく多いんですが、なんと!今作では性欲がなくなっています。前半は日本人の若い恋人がうざすぎる、という描写が延々続くので日本人の私としてはやや疲れた。途中、精神が極まって撃つか撃たないか、みたいなところで物語の最高潮を迎える。疲れた貴族も良かった。ていうかこの小説は全体的に疲れている。ウエルベックの小説の主人公は頭がよくて金持ちで性欲の強いおじさんがうじうじうじうじしていて差別表現とかも全然あるし無理な人は本当に無理だと思うんですが、私は好きな作家です。

「百年の孤独」ガルシア・マルケス(副読本として「百年の孤独を歩く」田村さと子
 読書会の課題本として読んだ。荒唐無稽なのにいかにもさらっと描いてあるから実際に起こったことのように錯覚するし、実際に起こったことなのかもしれない。ガルシア・マルケスの長い友人である田村さと子さんの本も理解に役立った。読んだあとさと子さんの本を読むと読まないとではずいぶん理解に差が出ると思う。また、友達に勧められて「ガルシア・マルケス東欧を行く」という本も読んだんだけど、そういえばガルシア・マルケスってジャーナリストだったんだよね、と思い出し、百年の孤独も後から調べるとだいぶ実在の出来事が盛り込まれていて(バナナ農園の労働者の虐殺とか)、だから全部彼の中では実際に起こったことなのかもしれない。これがベストセラーになるってすごいですよ。また10年後とかに読みたい。

「ヘルシンキ 生活の練習」朴沙羅
 社会学者の朴さんが日本からフィンランドへ二人の子供を連れて移住したときの様子を書いたエッセイ。良かった部分を抜粋する。
 p20「子どもはときに、自分を傷つけるようなことをしてしまいますよね。でも、彼らは、それを通じてしか学べないときがあるのですよ」(朴さんの子供が怪我したときの救急隊員の言葉)
 p122 十一月の初めごろ、晩御飯を食べていると、ユキ(雷鳴注:朴さんの子供)が「同じクラスの男子が、ユキがフィンランド語で話そうとすると、真似すんねん。それがめっちゃ嫌やねん。ほんで、その子は、ユキだけじゃなくて、他の子の真似もして嫌がられてんねん」と言ってきた。あーそういううざい男子いるよねー、あんまり度が過ぎるようやったら睨んどきー、と言いつつ、少し気になっていた。
 その数日後、その男の子(仮にエリオットとする)のお父さんが、私に、保育園で話しかけてきた。「うちの息子がおたくのお嬢さんをからかっているらしくて、申し訳ありません。やらないように言ってはいるんですが。多分、うちの子は、少しおたくのお嬢さんに興味があるんだと思うんです。ただ、それをうまく言えないから、嫌な気分にさせているのだと思います」。私そういう「アホな男子」って大っ嫌いなんですよ、と思ったけど、さすがに口に出すわけにいかないので「ハハハ、まぁ子供同士の事ですから」と、わりと意味不明なことを言った。
 それから一週間ほど、私はエリオットのことを忘れていた。あるときふと思い出して気になったので、ユキに「最近、エリオット、どう?」と質問したら「最近は真似して来いひん」。何があったんだろうね、と言ったら「お話し合いした」。「終わりの会で吊るし上げ」みたいなやつだろうか、と思ったら「クマとウサギの絵本を読んでおしゃべりした」。それだけ? クマとウサギの絵本って何?
 気になったので、次の日のお迎えのときに、もう一人の担任のロッタ先生に、何をしたのか質問してみた。すると、ロッタ先生はこう答えた。
「私たちは、物事を笑うことと、人を笑うこととは別のことだと教えました。前者は友達と楽しめるが、後者はそうではありません」
「エリオットは友達を楽しませる技術を知り、それを練習する必要があります」
「そのため、自分のやっている事を意識化する方がいいと私たちは考えました。だから、クマとウサギのお話を読み、友達を嬉しい気持ちにする方法に何があるのかを話し合いました」。
私は、このロッタ先生の言葉を聞いて園庭で驚いてしばらく言葉が出なかったのだけれども、ロッタ先生はそれに気づいただろうか。
「男の子はやんちゃ/アホだから、〇〇しても仕方がない」という説は、その男の子にとっても害があると思う。それに、〇〇された側の人間が嫌な気持ちになったとしても、その言葉で封じ込めてしまいはしないか。でも、それを批判して、その次はそのやんちゃな子に何をしたらいいのだろうか。
叱りつけるのではなく、淡々と教えればいいのだった。物語を笑うことと、人を笑うこととは別のことだ。世の中には友達を楽しませる技術がある、だからそれを練習しよう。つい忘れてしまうけれども、何事も学習と練習が大事なんだな。 
引用終わり。かなり長い引用になってしまい問題がある(引用する場合は引用した箇所より多くその部分について語らないと著作権を害するみたいな判例を過去に読んだことがある、うろ覚えですが)。本当はもっと引用したいんだけど。ただの海外移住エッセイじゃなくて、フィンランドの歴史というか地理的要因による考え方の違い、教育環境や生活環境について書かれていてとても面白かった。

「エンデュアランス号漂流記」アーネスト・シャクルトン 木村義昌、谷口善也訳
 星野道夫さんの写真展に行ったとき、愛読書として紹介されていて読んだ。
 シャクルトン船長率いる二十八名の隊員は南極横断を目指して航海するが、彼らの乗ったエンデュアランス号(木造!)は南極大陸に着く直前に流氷に砕かれ、沈んでしまう。一行は流氷に乗って南極海を漂流し、無人島に辿り着く。船長含む六名は、救命ボートで無人島から1500キロメートル先の捕鯨船の駐屯している島まで必死の航海をする。航海は成功し、捕鯨船の乗組員やチリの船の援助を受け、いくども失敗しながら仲間を残してきた無人島へ向かい、一人も欠けることなく救助した。実話だそうです。シャクルトン船長の観察力と決して諦めないタフな心と思いやり、隊員たちの協力とユーモア。船長とはこういう人がなるんだな。救命ボートに乗っているとき、空が晴れてきたと思って隊員に声をかけた瞬間、天まで届く真っ白な高波だった、というところで手に汗握り「助かれ!助かれ!」と思ってしまった。とても感動しました。

「ポストコロナのSF」日本SF作家クラブ編
 今とても勢いのあるSF作家たちによるポストコロナの短編集。柴田勝家「オンライン福男」、津久井五月「粘膜の接触について」、吉上亮「後香(レトロネイザル) Retronasal scape」.、樋口恭介「愛の夢」などが好きでした。

観てよかった(映画)🍿
「パリ、テキサス」ヴィム・ヴェンダース 1984年
 よかった、最高、百万点。あらゆるカットでの構図がかっちり決まっていて、人によっては構図が良すぎるのが気になるんじゃと思った。ハンター…。ラヴァシュキリをお弁当に入れているフランス人の奥さん。不器用だけど不器用なのわかってるけど好きとか、愛情とかそういうのどうしたらいいか分からないし、どうしたらいいか分からないから避けるしかないけど、でもそれしか方法を知らないというだけだし、それに直面するまでは自分がそうだって分からないし。観終わったあと気持ちをどう整理したらいいか分からなくてうろうろうろうろ一時間くらい散歩してしまった。

「親密さ」濱口竜介 2012年
 平野玲さんが発光していた。最初は発光してなかった。でも後半からもう私の目が劇中の平野さんをずっと追っていて、平野さんから目が離せなくなった。平野さんが発光しているのは私の視線を反射して光っているの?私以外の他の人には平野さんは光ってないように見えるのかどうなのか知りたい。もしかしたら恋をするってこういう感じなのかもと思った、いや、恋っていうか、目が離せないみたいな、好きの前段階みたいなのってこういうことなのかもと思った。しかし私はこの映画のことを考えるとき以外では平野さんのことを思い出しもしない。これって何?これが俳優の力?ラストシーンすごくよかった。劇中のセリフの「卑怯者」も。

「ソナチネ」北野武 1993年
 これからこういうことが起きますよ、というフリをしてから回収するまでが早くてテンポ良い。ムカついたら殴っちゃうし、いらねーと思ったら殺しちゃう爽やかさ。そうするほうがいいと思うからそうするけど、もうそういうことを思ったりしたりするのに飽きていて、強引に行かされた沖縄でだんだん追い詰められてついにやるべきことを見つけて、それをやり通して、だけどその後に起こることはもうわかってるから自分で幕を引く。いらないシーンがなくて研ぎ澄まされた映画だった。また観たい。

「しとやかな獣」川島雄三 1962年
 詐欺で生計を立てている家族の話で、ほとんどアパートからカメラが出ないのにも関わらず、実験的なかっこいい構図の連続で腰を抜かした。夕日のなかダンスをするきょうだいのシーンが美しい。登場人物のことをクズとか非道とか言ってしまえばそれまでだけど、みんな生きようとしているだけなんですよね。この監督の他の作品も観ようと思った。

Podcast🎧
勝家都心のカルマラジオ
 SF作家の柴田勝家さんとシナリオライターの各務都心さんが配信されているネットラジオ。Spotifyにもあるけど途中までしかないので、全て聴きたかったらYouTubeで。お二人は大学の文芸部で切磋琢磨し合った仲だそうで、創作を生業とするお二人ならではのおしゃべりに仲良しのゆるさが加わって心地良い。時々呼ばれるゲストが豪華。

コスメ💄
ADDICTION アイシャドウパレット
 なんとなく限定の103 under the starlightを買ったら粉質の軽さ、上質さにうっとりして腰が砕けてしまって、追加で003 marriage vowと単色のカラーを買ってしまった。しかしやっぱり103が良かった。上品なラメ。

シュウウエムラ ルージュアンリミテッドアンプリファイドラッカー
 香りがきつくなくて使いやすい、発色もすばらしい。なにより見た目がかっこいい。BG945を買ったけどもっともっと欲しくなってる。唇一個しかないのに。

コフレドール ネイルカラー
 速乾だし発色もいいし悪いところが一つもない。5色買ったけど全色欲しい。なぜなら指は10本もあるのだから…。

オルビス ヘアミルク
 これすっごく気に入って今年10本くらい買ってそのうち半分くらいは友達に配った。それくらいお気に入りの商品。私は面倒くさがりなので洗い流さないヘアトリートメントが楽で好きだから今まで色々試したんだけど、その中でもこれは値段と効果のバランスがとてもいい。詰め替えがあるのもいいですね。

ウォンジョンヨ ダイヤモンドライナー
 かわいいよ〜〜〜〜〜これを目の下に塗るだけで元気出る!

その他🐬
TEIJIN あっちこっちふきん
 あっちこっち水切りマットと食器用布巾を使っています。洗った食器をマットに一旦置いて、食器洗いが終わったらふきんで拭いて食器棚にしまう。マットや布巾は洗濯バサミに引っ掛けておくとすぐ乾く。拭き跡も残らないし買って良かった。

・電子ノギス
 3000円くらいの安いもので、どこで買ったかも忘れちゃったんだけど、たいへん便利だった。今年は棚を作ったりすることが多かったので、色々なもののサイズをサッと測れて、文字盤にサイズが表示されるのが便利だし楽しい。日頃はペン立てにさしていてすぐ取り出せるようにしておき、思い立ったときすぐものの厚みを測れるようにしている。

無印良品 歯磨きタブレット
 歯磨き粉がタブレット状に固められていて、口の中でがりがり噛むと発砲して歯磨き粉になるという商品。外出先で歯を磨きたいときとか旅行とかにいいと思う。歯を磨けないときでもこれをがりがり噛んでなんとなく口をゆすいでおくとさっぱりして歯を磨いた気になれる。効果があるのかどうなのかはわからないけど、さっぱりはする。

以上です。去年の日記を読み返していたら前半は結構落ち込んでいて、「どうせ失うものもないんだからギャンブルで全部スってめちゃくちゃに飲んで全部終わりにすればいいし」みたいなことが書いてあった。その後持ち直してギャンブルをせずに済みました。危なかった!しかし予断は許されません。最悪が0、最高が10だとしたらまだまだ4くらいの感じです。これってどうなの?毎日楽しいけど徐々に追い込まれていってる気がする!今年はなんとか6くらいになれたらいいと思っています。今年もよろしくね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA