2023/2/4-10

迷いの一週間。もやもやしている気分を押し流すように本を読み、服や物を捨てた。物を捨てると気分がいい。

正月に父親に尋問(父親は尋問のようなコミュニケーションしかできない)されたのがいまだに尾を引いている。
「給料はいくらなんだ」
「そんな給料でこれからどうするんだ」
「もう若くないんだから先のことを考えないと」
書き出してみると凡庸な問いだ。これ以外にもいろいろつまらないことを言われたが、そんなテンプレートな問いに嫌な気持ちにされたし、今も嫌な気持ちになっている。じゃああなたは今の人生、今のあなたの境遇になりたくてなったのですか、その状態になることを今の私の年齢のときに想定していましたか、と言いたかったが彼の人生のことは関係ないので黙っていた。父は若い頃からずっと政治活動やボランティアに情熱を注いでいたので、私のような生き方が(心の底から)理解できないのだと思う。尋問が彼なりの心配の方法であるということはわかるが、もう二度としゃべらないでほしいと思ってしまう。

近所の人が引っ越すというので棚をもらった。私の家にはほぼ家具がないのでありがたい…のか?私の部屋に知らない棚が闖入してきたので人見知りを発揮している。相手は棚だけど。なんかそわそわする。うまく付き合えるといいな。

今週読んだ本
📕エトガル・ケレット「あの素晴らしき七年」
 7年間に渡るイスラエル生活のエッセイ。隣国からミサイルが飛んでくるのが日常の世界の日常。以前ウエルベックの「服従」という本を読んだとき、登場人物の一人がイスラエルのビーチで遊んでいる様子に対して「ミサイルが飛んでくるのは日常なので、彼女が夏を満喫するのにミサイルが妨げになることはない」というような文章があったのを思い出した。我々の国も近所の国から頻繁にミサイルが飛んできているが明確な殺意がないぶん呑気にしている。
📕ユクスキュル/クリサート「生物から見た世界」
 五十嵐大介の「ディザインズ」というマンガが好きなので関連書籍として読んだ。出版当時に読んだら感動があったのかもしれないが、知っている内容が多かった。
📕矢内原伊作、宇佐見英治「対談 ジャコメッティについて」
 少し落ち込んでいたのでジャコメッティの話を読んだ。ジャコメッティの仕事の仕方はいつも私を励ましてくれる。
📕矢内原伊作「アルバム ジャコメッティ」
📕阿曽村邦昭, 奥平龍二等「ミャンマー:国家と民族」
 ミャンマーについて知りたいと思ったら読む本。800ページ近い大著なので気になる部分を拾い読みするのがいいだろう。
📕岸政彦「断片的なものの社会学」
 描かれないものの描かれない部分にこそ人間が現れている。大きな事件ではないことがらなのに覚えているようなこと。そういう忘れても構わないような、わざわざ話題にするようなことではないように思えることについて。
📕アーネスト・シャクルトン「エンデュアランス号漂流記」
 とても感動した。シャクルトン船長率いる二十八名の隊員は南極横断を目指して航海するが、彼らの乗ったエンデュアランス号は大陸に着く直前に流氷に砕かれ、沈んでしまう。一行は流氷に乗って南極海を漂流し、無人島に辿り着く。船長含む六名は、救命ボートで無人島から1500キロメートル先の捕鯨船の駐屯している島まで必死の航海をする。航海は成功し、捕鯨船の乗組員やチリの船の援助を受け、いくども失敗しながら仲間を残してきた無人島へ向かい、一人も欠けることなく救助した。実話。シャクルトン船長の観察力と決して諦めないタフな心と思いやり、隊員たちの協力とユーモア。こういう人が船長になるんだと思った。すごい手記だった。ページ数も多くないので読むことをお勧めします。

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